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釜匠 ”箱舟の湯”シリーズ 新作版画登場!

私が銭湯というモチーフを初めて描いたのは2017年のアート台北に出品した「箱舟の湯」という作品からだが、この銭湯というモチーフを広義にお風呂と捉えるならば実は画家として初めての個展を開催した2009年に「浴室」という小さな作品を描いている。お風呂というモチーフを描いた理由としては、人間の身近な日常生活の中に本来存在しないはずの野生動物を描き入れる事で人間の営みというものを風刺したいと考えたからである。

ただ、当時はお風呂以外にもトイレや洗面所、玄関なども描いており、お風呂というモチーフはあくまで“身近な生活空間”の一つとして選択したに過ぎなかった。

それから8年経った2017年。初めての海外での個展を開催するにあたり、私は自分自身が日本人である事を強く意識するようになっていた。それは上っ面だけの所謂クールジャパン的なものではなく、日本で生活しているが故に必然的に身に染み付いている日本の“臭い”のような要素が自分にも何かあるのではないかと模索していたのである。

そんな中、偶然訪れた近所の銭湯で湯船に浸かっている時にハッと気が付いた。「この銭湯を描いてみたい」私にとって身近であるが故に気付けなかった日本の臭いはこれかもしれないとようやく気付く事が出来た瞬間だった。

ただ、漠然と銭湯を描くだけでは作品の内容としては脆弱だと感じたため、この銭湯というモチーフに聖書のノアの方舟を要素として加える事にした。

ノアの方舟は私が頻繁に描くテーマで、本来であれば人間を含めた沢山の動物が一番い(ひとつがい)ずつ乗船し大津波が洗い流した後の世界で再び繁栄していくお話しなのだが、私はこの方舟がもし現代に再び現れた場合、乗船する動物達の中に人類が含まれているのかという問をテーマとして表現してきた。

この継続してきたノアの方舟というテーマと銭湯を融合する事で完成したのが、今も続く“箱舟の湯”シリーズの作品群だ。人間が使用するはずの銭湯を動物達が使用し、そこに本来いるはずの人間の姿は見当たらない。そうする事で人類の築いた文明社会を動物達が風刺しているのだ。

今回ジクレー版画作品として制作された2作品「大箱舟の湯」と「大鯨の湯」は1年毎に連続して描いたもので、初めに描いた「大箱舟の湯」はその名の通り箱舟の湯シリーズで初めて100号サイズの大作に挑戦した作品であり、その大きさを生かして数多くの動物達が描かれている。ただ、ここに描かれている動物達のほとんどは陸上の生物のみで、それは大洪水を生き延びるために方舟に乗船した動物達である以上仕方のない事である。

しかし、私はこのノアの方舟の際に乗船しなかった海中の水生動物達が大洪水の最中どのように過ごしていたのだろうと常々考えていた。そこで、今度は水生動物達を題材として箱舟の湯シリーズを描きたいと考えて制作したのが「大鯨の湯」なのだ。銭湯に入らないであろう水生動物達が銭湯を楽しむという内容は私にとってとても面白い題材となった。

このように今回ジクレー版画作品として制作されたこの2作品はそれぞれが“陸”“海”を表しており、私にとってとても意味を持つ組み合わせとなったのである。

ゾウやクジラのような巨大な生物からネズミや小魚等の小さな生物まで沢山の動物が描かれており、見れば見るほど楽しい発見がある作品となっているので是非手元でじっくりと見て欲しい。

釜 匠

釜匠 Takumi Kama Profile

1985 大阪生まれ 2006 第74回 独立展入選 (07‘入選) 2007 京都精華大学 芸術学部造形学科洋画コース 卒業 アクリル美術大賞展2007  優秀賞  (08‘入選) 第5回 武井武雄記念日本童画大賞入選 2008 第12回 越後湯沢全国童画展入選 第7回全国公募 西脇市サムホ ール大賞展入選 第25回FUKUIサムホール美術展 奨励賞 (09‘佳 作,12’大賞) 2009 個展『枠の中』<BAMI gallery> 個展『枠の外』<高松天満屋美術画廊> 第13回上海アートフェアー 出品 (10‘) 2010 第8回 前田寛治大賞展出品個展『のぞきみ展』 <BAMI gallery> 2012 個展『ランチボックス』<松坂屋名古屋店> (14’,16’,19’)  個展『ナカマハズレ』<大丸東京店> (13’) 2013 個展『The works of KAMA Takumi /釜匠作品展』<BAMI gallery > 2015 個展『女子高生物』<BAMI gallery>個展『箱家』 <BAMI gallery> 2016 個展『箱庭』<岡山天満屋美術ギャラリー> (19‘) 2017 個展『箱庭』<福山天満屋アートギャラリー>  個展『箱の中』<あべのハルカス近鉄本店> (19‘)  ART Taipei 2017 出品 <台湾> (18‘,19’) 2018 京都府新鋭選抜展2018 最優秀賞  <京都文化博物館> 2020 個展『枠の中』<BAMI gallery> 2021 アートフェア東京2021