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松本央 「綴られる世界」

今回は私が最近力を入れているレースをモチーフにした作品を発表いたします。

私は、はじめレースを自分の絵を構成する要素、モチーフの一つとしてしか見ていませんでした。

しかし、何作かレースをモチーフにした作品を描いたときに、なぜこのモチーフに自分は惹かれたのか、その意味を考えるようになりました。そして、レースの成り立ちや作り方を調べたり、教えていただいたりする中で、私がレースをモチーフに描くべき理由が見つかったような気がしました。

その理由は大きく2つあります。

1つ目の理由は、レースを油絵で描くことで遠い過去の存在である昔の画家たちと私が精神的なつながりを持てたように思えたことです。レースは私が憧れている17世紀の西洋絵画の中にもよく登場します。王侯貴族の襟や衣服の装飾としてもよく使われ、その緻密な模様は絵に華やかな印象を与えています。その反面、レースは描くのに非常に手間がかかるのだろうなぁと私は描くことは敬遠していました。

以前に私の憧れの画家であるレンブラントの肖像画を摸写する機会がありました。

その肖像画にはしっかりとレースが描かれていましたので私も描かざるを得ない状況になり、試行錯誤し何とかそのレースの部分を描きあげました。その時にレンブラントと同じことができたという絵描きとしての自信と喜び、何とも言えない達成感を得ることができました。それと同時に、彼らが絵画で綴ってきた世界の一端を受け取ったようにも感じました。

2つ目の理由は、手編みのレースの制作方法を知った時にあります。

レース編みは一本の糸で編まれていること、はじめは糸で小さな輪(円)を作るところから始めるところ、どこまでも広げていくことが可能なこと、ほどけば元の一本の糸に戻すことができることを知りました。

このレース編みの構造や制作過程を知ったとき私はすごく感動しました。
それはレース編みの構造が、私が日頃から考えていたこととよく似ていると思えたからです。

人や物事の出会いやつながりによって私が社会の中で存在でき、そのつながり(目に見えるものだけでなく見えないものも含めた)によって私という人間が形作られている。

始まりは小さなきっかけや出会い(縁)にすぎないかもしれないがその積み重ねで現在の自分がある。 この考えとレース編みの構造が結びついたときに、私の中でレースをモチーフとして選択する意味が大きくなったように思います。

糸によって綴られ、緻密な模様を表現するレースは、その上に置かれたものや周りを明るく華やかに引き立てるだけでなく、ふと眺めたときにその裏側にある構造についても少し考えさせられる。レースは私にとってそのようなモチーフあり、今回の発表する私の作品が皆様にとってもそうであれば幸いです。

1983年 京都生まれ 
2009年 京都精華大学大学院芸術研究課博士前期過程洋画専攻修了
2014年 「第68回二紀展」奨励賞 受賞
2015年 松本央洋画展『光と陰』 松坂屋名古屋店(愛知)
2015年 松本央洋画展『光と陰』 天満屋岡山店美術ギャラリー(岡山)
2016年 「第63回関西二紀展」大阪市長賞 受賞
2018年 松本央洋画展『レンブラントへの憧憬』 あべのハルカス近鉄本店(大阪)
2019年 松本央洋画展『ルート9』 一畑百貨店松江店美術サロン(島根)
2019年 松本央洋画展『レンブラントへの憧憬』 天満屋八丁堀ビル7階アートギャラリー(広島)
2020年 松本央 個展『アナログチューニング』 BAMI gallery(京都)
(同10、11、12、13、14、15、16、17、18、19年)

現在 京都精華大学マンガ学部アニメーション学科非常勤講師 在任中