
岡部賢亮 「妖精の瞬き」
晴れているのに降る雨も、雨雲に轟く稲妻も、荒れ狂う突風も、雨上がりの一枚の葉に降りた露も、そんな瞬間にはきっと目には見えない妖精たちがいてそれらを引き起こしているのだと思う。

ただ妖精たちはいつもそこにいるとは限らない。私たち人間の都合なんてお構いなしに勝手気ままに現れてはまばたきする間さえなく消えていなくなり、忘れたころにまた現れる。
妖精たちは瞬いているのだ。

彼らはときに気付かないほど小さく、ときに大勢を巻き込むほど巨大な存在となってこの世界に現れては瞬き始める。
今この瞬間にもすぐ近くに現れては瑣末なことに振り回される私たちを見て嘲笑っているのかもしれない。
そんな妖精たちは別に誰かのためにそこにいるわけではない。ましてや自分たちのためにそこにいるわけでもない。些細なことで一喜一憂する私たち人間とは似ても似つかない、右も左も上も下もない彼らは何物にも頓着せず、ただそこにあって瞬いているだけなのだ。

なんとも羨ましい存在である。
そんなふうでありたいと思えば思うほどそうなれないと悟ってしまう。
そう思いながらああでもないこうでもないと手を動かしていると、妖精たちが形になって現れるような瞬間がある。

私はそんな瞬間を求めて制作をしているのかもしれない。
ただそんなこととはつゆ知らず妖精たちは今日も好き勝手に瞬いているのだろう。

岡部賢亮 Kensuke Okabe
1990年 大阪府生まれ
2013年 沖縄県立芸術大学美術工芸学部美術学科彫刻専攻 卒業
2015年 沖縄県立芸術大学大学院造形芸術研究科環境造形専攻彫刻専修 修了
展覧会
2016年 個展『ツクモガミノためのギジンカ』(BAMI gallery/京都)
2017年 池袋アートギャザリング (東京都芸術劇場/東京)
2017年 MONSTER Exhibition 2017 (渋谷ヒカリエ/東京)
2018年 個展『童子と剣』(BAMI gallery/京都)
2018年 個展『少年』
2019年 個展『人々』
2020年 個展『童子』
2020年 個展『臆病な妖精』
2021年 Art Fair Tokyo 2021 (ブース BAMI gallery/東京)